頭痛について
- 2021年11月18日
- 症状
頭痛といっても、その誘因や症状はいろいろです。筋肉の凝りからくる頭痛、あるいは片頭痛のような慢性的な頭痛は、命に別状ありませんが、日常生活に支障が出て大変です。また、くも膜下出血や脳出血などによる突然の頭痛は、すぐに命取りとなるような危険な頭痛です。まずは医療機関を受診することが重要です。
「頭痛持ち」の頻度
日ごろから慢性頭痛に悩まされている人、いわゆる「頭痛もち」は日本人の 3 人に 1 人くらいとみられます。慢性頭痛にもいろいろありますが、一番多いのが「緊張型頭痛」で、次に「片頭痛」、そのほか「群発頭痛」などがあります。
緊張型頭痛の特徴
痛みの程度は片頭痛に比べて軽く、頭が重く圧迫されるような、グーッと締めつけられるような痛みがあります。重だるいと表現される方が多いです。
一般的に 30 分~7 日間持続します。
生涯有病率は 30~78%の範囲といわれています。
以下の 2 項⽬を満たすと診断されます。
① 両側にある
② 締め付けられるような,または圧迫されるようなもの
③ 痛みは軽度から中等度
④ 歩⾏や階段の昇降のような⽇常動作で増悪しない
のうち 2 つ以上を満たすと診断されます。
頭痛の起こり方も、漠然とした頭の鈍重感に始まり、1 日中持続する傾向があります。
<原因>
• 主な原因は身体的・精神的ストレスによる後頚部の筋肉の緊張と考えられます。
例えば、パソコン操作やうつむき姿勢などを長時間続けると、頭を支えている首や肩の筋肉に大きな負担がかかり、頭の筋肉も緊張し、血流が悪くなり、頭痛が起こってきます。
• また精神的なストレスは自律神経に影響して、頭痛の誘因になります。
<対処法>
・いずれのタイプも体と心の緊張を解消するのが第一なので、初めから薬に頼らず、ストレッチや体操、マッサージをしたり、外の空気を吸ったりして気分転換を図ることです。ゆっくり入浴するのもリラックスするのに役立ちます。
・頑固な痛みに対しては鎮痛薬・筋弛緩薬を処方しますが、慢性的な痛みには抗不安薬や抗うつ薬が有効な場合もあります。
片頭痛の特徴
約 9%の有病率といわれ、30~40 歳代の女性に限ると 20%は片頭痛もちです。
・症状としては、ズキンズキンという拍動性の痛みが、頭の片側(ときには両側)に起こります。痛みは数時間から、長い人で 3 日間ほど続きます。
・吐き気を伴い、光をまぶしく感じたり、音にも敏感になります。
習慣的に片頭痛を起こす方のなかには「これから頭痛が来るのがわかる」という人がいます。
また、頭痛の前兆として、目の前にキラキラした光が出現して視野がぼやける「閃輝暗点」という症状が現れる人もいます。さらに手足が麻痺する人もいます。
原因は研究中ですが、『大脳の深い部分にある間脳あるいは脳幹と呼ばれる器官の付近の異常興奮』と考えられるようになってきています。つまり片頭痛は「中枢神経疾患」であると考えられています。
<対処法>
まずは、自分の片頭痛を起こす誘因をつかんでおくことです。一般的な誘因としてはワインやチーズが有名ですが、患者さんによってさまざまなものがあります。
○片頭痛の誘因となるもの○
空腹、チョコレート、ワイン、チーズ、かんきつ類、ナッツ類、肉・ソーセージ
乳製品、コーヒー、紅茶、中華料理
寝すぎ、寝不足、月経前後、経口避妊薬、目・鼻・歯などの疾患
晴れ・曇り・雨、暑さ・寒さ、
光・音、運動
アレルギー、ストレス など
週末に頭が痛くなる人で、「寝過ぎ」が誘因と考えられる場合は、いつも通りに早目に起きることです。外出時に片頭痛の起こる人は、車や人の流れ、騒音、まぶしさなどが誘因となりますので、サングラスをかけるとよいでしょう。
片頭痛の防止には、これらの誘因を避けることですが、頭痛が起きた場合は、できるだけ安静にすることです。暗い部屋に横たわり、眠ってしまうことが一番です。
トリプタン製剤(商品名;イミグラン・マクサルト・レルパックス・アマージなど)の内服が著効することが多いです。
頻度が非常に多い場合(月に 6 回以上)には、バルプロ酸ナトリウム(デパケン・セレニカ)や Ca 拮抗薬(ミグシス)、アリプチン(トリプタノール)などの予防薬を毎日内服することも有効です。
群発頭痛とは?
群発頭痛の有病率は、0.056%~0.4%程度(1000 人に 1 人程度)と報告されています。
20~40 歳代の男性に発症することが多く、男性における有病率は女性の 3~7 倍です。
毎年決まった時期にまとまって起こる頭痛で、「痛みの王様」と呼ばれるほど激しい痛みが特徴です。眼窩(がんか)周辺から側頭部にかけて、短時間の針でえぐられる様な激しい痛みが起こります。数週から数ヵ月の群発期間中、毎日出現する頭痛で、夜間・睡眠時等の決まった時間に頭痛発作が起こりやすいのが特徴です。
眼の後ろ側を通っている内頸動脈が拡張して炎症を引き起こすため、目の奥が痛むことが多いといわれています。
頭痛以外に①もしくは②を満たすと診断されます。
①頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の 1 項目を伴う
a) 結膜充血または流涙(あるいはその両方)
b) 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
c) 眼瞼浮腫
d) 前額部および顔面の発汗
e) 前額部および顔面の紅潮
f) 耳閉感
g) 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
②落ち着きのない、あるいは興奮した様子
<対処法>
群発期に少量のお酒を飲んだだけでも発作が起きるので、期間中は控えることです。
また、痛みが起こると薬は効かないので、決まった時間に発作が起こる場合は、その前に予防薬(バルプロ酸など)を飲むことです。100%濃度の酸素吸入で痛みを抑えることもあります。
命にかかわる「危ない頭痛」など
突然の強烈な痛みや徐々に増強する痛み、手足の麻痺や言葉のもつれなどを伴った頭痛など、とにかく「これまでに経験したことのない頭痛」ならば即、救急車で脳神経外科を受診することです。
●くも膜下出血―脳の動脈のこぶ(動脈瘤)が突然破裂し、脳を覆うくも膜下に血がたまるもので、急に、頭が割れるようなガーンという激痛がおそうのが特徴です。続いて吐き気やおう吐、意識低下などが起こります。40 歳代以降に多く、発作の数日~数週間前に、前兆となる経験したことのない軽い頭痛が起きることもあります。
●脳出血―多くが高血圧がもとで脳血管が破れて出血し、急に頭痛が起きて短時間で痛みはピークに達します。頭痛は軽くても手足の麻痺や、言葉のもつれ、吐き気やめまいなどを伴います。
●脳腫瘍―脳にできた腫瘍が大きくなるにつれて、痛みもだんだんと強くなります。できた部位によっては、手足の麻痺や視力障害などが出ます。
●髄膜炎・脳炎―ウイルスや細菌の感染が髄膜に及び、高熱とともにズキンズキンという激しい頭痛が起こります。首の後ろが硬くなるのも特徴です。炎症が脳まで及ぶと脳炎となり、麻痺や意識障害が起きます。この場合は、神経内科を受診します。
●慢性硬膜下血腫―頭をぶつけたこと(あるいは軽い衝撃)が原因で、頭骨の下にある硬膜とくも膜の間に徐々に出血し、1~2カ月後に血腫が脳を圧迫して頭痛が起こります。とくにお年寄りに起きやすく、ぼんやりしたり、物忘れや尿失禁なども出たりして痴呆症に間違われることもあります。血腫を取り除く治療をすれば、症状はなくなります。
参考文献
1)日本頭痛学会:P6 , I. 頭痛一般 I-2 一次性頭痛と二次性頭痛はどう鑑別するか , 慢性頭痛の診療ガイドライン , 医学書院 , 2006.
2)日本頭痛学会:P3 , I. 頭痛一般 1 頭痛はどのように分類し診断するのでしょうか , 慢性頭痛の診療ガイドライン市民版 , 医学書院 , 2014.
3)日本頭痛学会:国際頭痛分類第 3 版 beta 版 , 医学書院 , 2014
青葉台脳神経クリニック