もの忘れ
もの忘れ
認知症とは認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出ている状態を言います。アルツハイマー型認知症が最も多く、脳神経が変性し脳の一部が萎縮していく過程で生じてきます。物忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。次に多いのが脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)による血管性認知症です。障害を受けた脳の部位により症状が異なります。ゆっくり進行することもあれば、急速に進むケースもあります。現実に見えないものが見える幻視や手足が震えたり歩幅が小刻みになったりする症状が現れるレビー小体型認知症などもあります。
認知症ではなさそうだと思っても、以前より物忘れが増えていたり、物忘れの頻度が同年齢の人と比べて少し多いと感じたりしたら、念のために受診しましょう。早期発見・早期対応につながります。
また、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症といった病気により生じた認知機能低下は手術で治療することが可能です。
私たちの記憶力は30歳から40歳をピークにしてその後はゆっくり低下していくと考えられており、物忘れは、加齢に伴いどなたでも経験します。ただ、この物忘れには、年齢相応に起こってくる生理的なものと、軽度認知障害(MCI:健常と認知症の中間段階)や認知症の初期段階といった病的なものが存在しますので、その原因を見定める診断がとても重要になります。
病気による物忘れであっても、早期発見や適切な治療を行うことで約15~40%の方が回復することも知られています。根本的な治療法が確立されていないアルツハイマー型認知症などでも適切な薬物選択や生活指導を行うことで、症状の改善や進行抑制が期待できます。
当院では「病的な物忘れ」を早期に発見し、適切な治療につなげられるように、神経学的検査、神経心理検査、画像検査などを用いて、総合的な診断を行っています。また、患者様の状況に応じて環境調整などのご相談もお受けしています。
加齢による物忘れと、認知症の症状としての物忘れの違いは、物忘れを認識(自覚)できているかどうかです。例えば、加齢による物忘れは「食事をした事は覚えているが、何を食べたのかを思い出せない」というものです。対して認知症は「食べたこと自体を思い出せない」といった違いがあります。
下記のような物忘れの症状は、認知症の初期症状の可能性があります。このような症状がみられたら、一度、検査を受けることをおすすめします。ご自身では気づかないことも多いため、周囲から受診をすすめられた時にも気軽に検査を受けるようにしましょう。また、ご家族に下記のような症状があった場合、ご本人が抵抗なく受け入れられるように配慮しながら受診を促すようにしてください。
認知症にはいくつかの種類があり、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が8割を占めると言われています。その他にレビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などがあります。また、年齢に伴う物忘れと認知症の中間的な段階にある軽度認知機能障害(MCI)があります。いずれもできるだけ早期に適切な治療を受けることが重要です。
ものごとを記憶したり、判断したり、順序立てて行うなどの脳の機能を認知機能と言います。認知症は、この認知機能の低下によって、日常(社会)生活に支障が出るようになった状態を言います。多くの場合、徐々に認知機能が低下して認知症になりますが、認知機能が正常とも認知症とも言えない中間の状態があります。これを「軽度認知障害」と呼びます。物忘れが目立つものの“日常生活には支障がない”という状態であり、この時点で適切に対応することで約15~40%の方の認知機能が正常化することが知られており、認知症治療の重要なポイントになっております。
日本人で最も多い認知症で、全体の6割以上を占めています。アルツハイマー病は、脳にアミロイドβやタウ蛋白という特殊なたんぱく質が沈着し、それにより正常な脳神経細胞が破壊されることで発症すると考えられています。
アルツハイマー型認知症の進行には以下の3段階があります。
① ものごとを忘れるようになる(健忘症状)
② 読み、書きが困難になる
③ 今いる場所や時間、自分の住所がわからなくなる(失見当識)
➀ 道に迷う(空間的地誌的見当識障害)
② 徘徊する
③ 言葉のやり取りがうまくいかず、用件を伝えられない(失語)
④ 着替えがうまくできない、色々な図形が描けない(失行)
① 小刻み歩行、前傾姿勢(運動障害)
② 最終的には、身動き一つしない、言葉も発しない寝たきりの状態になる
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が起きて、その後遺症として認知症になるものです。脳血管障害によって突然認知症を発症したり、小さな脳梗塞(かくれ脳梗塞)がたくさんあることで徐々に認知症が現れたりする場合もあります。障害を起こした部位によって失われる機能や症状が異なります。理解力や判断力は保たれ人格はしっかりしているように見えても、記憶力が低下してるというような「まだら認知症」もみられます。脳血管障害を引き起こす原因となる、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心臓病などの生活習慣病を患っていることも特徴です。
問診では、認知症病型分類質問表(DDQ43)や長谷川式HDS-R、時計描画テスト(CDT)などを行います。また、頭部MRI検査と同時に、必要に応じてVSRAD(認知症分析)を行います。
こうした検査を定期的に受けていただくことで、認知症の適切な予防と、早期発見・治療が可能になります。また、脳血管性認知症の発症や進行には動脈硬化も大きくかかわっていますので、そうした既往症も含めてトータルにサポートします。